当サロンでは、施術だけでなく会話も大切にしています。
今回は、そのあたりのお話をしたいと思います。
■ 「どこへ行っても、伝えたい場所がうまく説明できない」
以前、あるお客様からこんなお話を聞きました。
「どこへ行っても、分かってもらえない」
ご本人は股関節が気になっておられました。
しかし、うつ伏せで確認しても、決定的な引っかかりが見つかりません。
他にも気になる場所はあるはずなのに、「そこは気にならない」と言われます。
施術者が見ているものと、ご本人が感じているものに違いがありました。
ですが当サロンでは、元々いろいろな体位を使いながら施術を行っています。
すると、ある体位で「そこ!」と反応されました。
やっと分かってもらえた。
長年のモヤモヤが晴れた瞬間でした。
ところが、その後に意外なお話が続きました。
お客様は毎回、
「そこを60分触ってもらえれば満足」
と言われたのです。
もちろん施術者としては、同じ場所だけを60分触り続けることが理想とは言えません。
他にも気になる場所がありますし、全体を見なければ身体のバランスは整わないからです。
そこで改めて、
「もし今後もそこだけを触り続けるとしたら、本当にそれが理想なんでしょうか」
と伺いました。
すると最初は、
「それでいい気がする」
と言われました。
でも少し時間を置いて考えてみると、本当に欲しかったのは、60分そこを触ってもらうことではなかったそうです。
✔『技術じゃ足りない差』
ただ、ずっと説明できずにいた自分の感覚を、誰かと共有したかった。
それだけだったのかもしれません。
さらに振り返る中で、
自分は伝えているつもりでも、実際には説明ではなく、焦りやイライラが混ざった言葉になっていたかもしれない、という話にもなりました。
「ここを押して」
「そこじゃない」
「もっとこっち」
そんなふうに、相手に分かってもらうための言葉ではなく、自分の理想を押し付ける言葉になっていたかもしれない。
そう気づかれたのです。
「このまま同じことを繰り返していても将来は変わらない気がする」とも言われました。
そこで一度、
身体を軽くすること以外に、今本当にやりたいことは何ですか?
と伺いました。
すると出てきたのが、実家の断捨離でした。
体の不満と同じくらい、断捨離が進まないことにイライラしていたそうです。
家族が分かってくれない。そんな思いも抱えておられました。
そこで、
身体のことはいったん施術者に任せてみる。
その代わり、断捨離を終わらせることに力を使ってみる。
そう決められました。
すると不思議なことに、長年進まなかった断捨離が少しずつ動き始めました。
家族にどう伝えたら協力してもらえるか、そんなことを考えるようになったそうです。
気づけば、股関節が気になる頻度は減っていました。
そして、断捨離も半分以上終わっていました。
もちろん、施術が断捨離を終わらせたわけではありません。
でも、「分かってもらえた」という経験は、人を前へ進ませる力になることがあります。
それが満足につながるなら、とても嬉しいです。
■ 「伝わった」と思ったことの難しさ
一方で、再び印象に残る出来事がありました。
先日、海外から来られたお客様を施術する機会がありました。
インバウンドが増えつつある今、こうした機会も少しずつ増えています。
その方はツアーの途中で来店され、施術後は再び合流する予定になっていました。
そのため、普段のようにゆっくり説明をしたり、施術後の反応を確認したりする時間はほとんどありませんでした。
以前、ヨーロッパ圏にはエステはあっても、整体があまりないという話を聞いたことがあります。
ところが今回のお客様は、「普段から整体へ通っている」と話されていました。
そのため私は、施術に対する感覚もある程度共通しているのかもしれない、とどこかで思っていました。
施術後には、可動域の変化も確認できていました。
私自身としては、ある程度変化は出ていると感じていました。
しかし、通訳をしてくださった方から連絡をいただきました。
「フランスでは、あまり揉むマッサージ文化がないそうです」
そして、うつ伏せで施術を受けている間、ご本人には刺激が強く感じられていたとのことでした。
✔『なぜ広島でメンターを学んできたのか』
私は強く揉んだつもりはありません。
でも、文化の違いだったのか、施術経験の違いだったのか、あるいは言葉の問題だったのか。
今となっては分かりません。
というのも、その方とは施術について十分に会話をする時間がありませんでした。
ただ「整体へ通っている」という言葉から、日本で私たちが想像する整体を思い浮かべていました。
でも実際には、違うケアを指していたのかもしれません。
施術後も、すぐにツアーへ戻られたため、その場で感想を聞くこともできませんでした。
だからこそ、後日いただいたお話は、私にとって大きな学びになりました。
同じ言葉でも、人によって意味が違うことがあります。
まして文化や生活環境が違えば、同じ言葉でも全く別のものを指していることがあります。
「分かったつもり」になることは、意外と簡単です。
でも、本当に理解することは難しい。
最初のお客様も、今回のお客様も、それぞれ違う形で同じことを教えてくださいました。
人は、本当に分かってもらえた時に安心します。
でも、相手を本当に理解することは、思っている以上に難しいものです。
施術の技術だけではなく、言葉の受け取り方や、相手の背景を知ろうとする姿勢も、まだまだ学ぶことが多いと感じています。
だからこそ私は、体だけでなく、その人が本当に伝えたいことにも耳を傾け続けたいと思っています。
✔『当サロンの通い方』
■ 広島市中区|伝わる感覚を大切にする筋膜ケア
➔【筋膜リリースの考え方】を見る

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